今回は過去問の話2です。
前回は
四谷大塚の過去問データベースで、様々な学校の過去問が見られる
過去問は練習にも使えるけど、親が学校分析に使う時に非常に役立つ
ことを紹介しました。
今回は、学校主催の入試説明会についてです。
学校が主催する各種説明会の中には、
学校説明会(学校紹介が目的。校風、入学・進学実績を説明してくれて見学も可能)
入試説明会(募集要領や科目ごとの試験内容、採点方針の説明。見学はほぼなし)
といったものがあります。
学校選びでは
学校説明会に参加して質問し、本当の姿を知るのがいいです
と過去に紹介しましたが、実際に受ける可能性がある学校の場合は、
参加可能(資格がある)なら、入試説明会には必ず参加した方がいい!💪
と思います。
基本的に入試説明会は、
入試問題作成(主に夏ごろ)が終わって準備が整った10月以降
に開催されるようですが、学校によって1~複数回開催されます。予定表は要チェックです!
また熱望校(憧れの一校)であれば、4年生以降は毎年行った方がいいと思います。
6年生に譲るべきという考えもあるかもしれませんが、最初に「参加資格があるなら」と書いたように
学校側が受け入れている学年は何年生でも問題ない
学校側も、毎年参加するほどの熱望する生徒に期待している
6年生同士もそうだが、保護者が予約日を確認して申し込めば大体予約は取れる
と思います。むしろマナー違反だと思うのは、
同年の説明会に複数回参加する(6年生親の熱望アピールかもしれませんが意味はない)
行かなくなったのにキャンセルしない(ちなみに説明会前日や当日はキャンセルが出る)
学校説明会と同じノリで、家族総出で参加する(座席をたくさん確保する)
などかと思います。複数回開催する学校は多いですし最近はWeb説明会も増えたので、
よほど現地で見たい場合でなければ、Webが便利です(HDMIキャプチャで録画し詳細確認が可能)。
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入試説明会は、
問題の傾向
重視する点
どんな生徒を採りたいか
が具体的に語られます。
私が上の子の時に参加したある学校の入試説明会のメモ抜粋を示します。
2019年と2020年に連続で参加した内容を、見比べられるようにまとめました。
学校はかなり明確に、欲しい生徒・その生徒を選ぶための問題構成を語っています。
国語
2019年の入試説明会:
(入試傾向)
- 例年通り大問2つ。小説か物語が1つ、説明か論説が1つ
- 記述重視。字数制限も例年通り
(入試対策、求める生徒像)
- 言葉の重要性を大切にしてほしい
- 慌てて答えず、問題文をよく読むこと。そうしないとひっかかる
(記述対策)
- 出題者の意図を考えてほしい
- 「相手(ここでは採点者)に伝わるように書こうとしているか」が見られる
- 漢字は丁寧に。但し上手下手はまったく見ない
- 「漢字の正しい形を知っている」と伝わるよう、止め・跳ね、払いがあればよい
2020年の入試説明会:
(入試傾向)
- 例年通りなので過去問をしっかり解いてくること
- 漢字・記号選択もあるが記述問題の配点が高め(※入試の配点は通常、非公開!)
- 記述の字数制限も例年通りで、部分点あり(=問題文をよく読めということ)
- 漢字・語句の問題は本文から出す(例年通り)
(入試対策、求める生徒像)
- 対策は過去問最優先(=今年は出題傾向を変えないよ、ということ)
- 読書量の多い生徒が入学してくる(=本文長いから文字嫌いは読むだけで大変)
- 学校や塾で問題文をしっかり読める生徒(「丁寧に読む」に抵抗がない)
(記述対策)
- 出題意図の読み取りが重要
- 本文の言葉の切り貼りは低得点にする
- 自分の言葉で出題者にメッセージを伝えられるか?という考え方をするように
(注意)自分の意見ではない。つまり言い換え力=語彙力と伝達力重視
- 漢字は丁寧に。上手下手は見ない
(国語科が大切にしていること)
- 言葉の重要性を意識している子に入学してほしいです
- 文字の読み替えに抵抗感のない子を求めています
- 話の筋道に興味がある子、考えを巡らせることが好きな子が欲しいです
2年間でほぼ同じことを、しかも結構明確に、具体的に語っていますよね。
過去問を解析する際、学校メッセージを知っているか知らないかで、
問題を見る目が全然違ってくることが想像できるのではないでしょうか。
国語に関しては記述の重要性に加えて、
話の筋道を考え、豊富な語彙力で他人と物語について話し合うことを楽しめる生徒
を望んでいることがよくわかります。
算数
2019年の入試説明会:
(入試傾向)
- 大問1は小問集合。一部記述あり(考え方+式を書くように)
- 大問2から4は(1)と(2)が連続。大問4は記述
- 記述重視。字数制限も例年通り
(身につけておいてほしいこと)
- 計算力。早く正確に複雑な計算ができること
- ”数学的”なものの見方、立体、場合の数(※数学的=論理思考と私は解釈)
- 説明力。式だけでなく立式の理由「なぜこの式にしたか」を言葉で加える
- 出した答えの意味を書く(簡潔に。説明文でなく。どこの何のことか明確に)
- 図や式だけで意味不明だと、加点どころか減点するので注意
- 必要な単位は忘れないこと
- 普段から「なぜそういう答えになったか」を説明する訓練をして下さい
2020年の入試説明会:
(入試傾向)
- 出題形式の変更はない
- 大問2から4は(1)と(2)が連続。大問4は記述
(身につけておいてほしいこと)
- 計算力。早く正確に複雑な計算を
- ”数学的”なものの見方、立体的、多面的な見方
- 場合の数。丁寧に「〇〇の時」といった条件整理を
- 時系列があるものは、並び順を書き入れる(単語レベルの表記でOK)
- 必要な単位は忘れずに
(記述対策)
- 途中式がないものは減点
- 数字、計算、図のみだと加点できない。むしろ減点。何を表すか説明する
- 簡単な”文”でいいので何のことか説明してほしい(”文”という明確な指示あり)
- 考えを整理して書いてほしい。他人に伝わるような文・言葉で
こちらも2年間でほぼ同じことを、明確に・具体的に語っていますよね。
しかも算数でありながら、他人に伝えることの重要性を問うています。
某、算数大好き学校では
汚い答案でも先生たちは一所懸命解読して、子どもの算数力を見出します!
答案いっぱいに、どんなことを考えたかを書いてほしいのです
と言われたのとは大違いでした😅そこの学校は理科も大好きなので、
他人に伝える力は後回しでも探求心や、とことん思考する力が欲しいのでしょう。
一方で今回メモを紹介した学校は、入学後は算数でなく数学であり、
中学校での学びで「他者との対話・議論」が盛んであることを暗示しています。
読む(聞く)力と伝える(話す)力がないと、入学後は大変ですよ、ということです。
これだけでも
幼くても好奇心旺盛な子に向いているか、それとも大人びた子に向いているか
がわかったりします。そして学校は自らが欲しい子だけが選抜されるように、
何年もかけてその学校の特色ある入試問題を、作り続けてきています。
理科
2019年の入試説明会:
(入試傾向)
- 大問数は変動する(毎年固定する、という方針はない)
- リード文や会話文があるのでよく読むこと
- 記号選択と記述の両方
- 出題範囲(分野)は広げる予定
- 分野(物理・化学・生物・地学天文)を分けるこだわりはない
- 複合問題あり
- 3つの力「理解力=読み取り」「考える力=考察」「表現力=伝える」を見る
- 対策はしづらいと言われているし、実際しづらいと思う
- 単純な知識、パターンで解ける問題は出さない
- 知識を「思考のツール」として使っているかを見る
(身につけておいてほしいこと)
- 好奇心や疑問を持つこと(おや?あれ?)
- 自分の考えを持とうとすること
- 新たに理解したことを”文章”で他人に伝える訓練をしてきてほしい
2020年の入試説明会:
(入試傾向)
- 例年通りで大問2~3個
- リード文もいつも通り
- 今回はグラフの作図を入れるかも(大ヒント!)
- 分野(物理・化学・生物・地学天文)ミックスで総合問題を出す
- 3つの力「理解力=読み取り」「考える力=考察」「表現力=伝える」を見る
(欲しい生徒像)
- 身近な現象に「なぜ?→調べる→解決→他人に易しく伝える」ができる子
- ネットでなく自分で考えた答えを出せる
- リード文から情報を”複数”拾い上げて、自分で答えを出せる
- 複数の情報から仮説を立てて疑問を解決し、第三者にわかるようにまとめる
- なぜそういう仕組みになっているのか、背景を探る
この学校は算国だけでなく、理科でも「他人に説明する力」を問うています。
大人とも、生徒同士でも、コミュニケーションを大切にしていることが伝わってきます。
社会
2019年の入試説明会:
(出題形式)
- 例年通り、地理・歴史・公民からバランスよく出す
(出題ポイント)
- 世の中の動きに関心があるか。新聞・ニュース・時事問題
- 努力してきたかを見る(基礎力があるか)
- 論理的に考えているかを問う
- 問題文を注意深く読んでいるか
- 表現力(自分の考えを相手に伝わるように説明する力があるか)
(重要なこと、出題者が見たいこと)
- 知識は漢字必須。記述回答の中は誤字があっても許容する
- 問題文の精読、資料(表・グラフ)を読み取り、プラスアルファを記述
- 問いに対する答え(結論)に対し、どうやって導いたかを書くと加点される
- 地域問題、未来の問題、国際問題など広く関心があること
2020年の入試説明会:
(入試傾向)
- 出題形式に変更なし
(出題ポイント)
- 基本をちゃんと勉強しているか見る
- 細かい知識より基本的なこと(時代に関すること、流れとか)
- 社会や世界に関心があるか、家族で会話しているかがわかる問題
(重要なこと、出題者が見たいこと)
- 論理的に考えているか
- 問題文を注意深く読み、多面的に見ているか、表現力があるか
- 知識でなく事柄の因果関係を捉えているか
- 情報を読み取った後、考えを図や表にして情報整理できるか
- 知識は漢字必須。記述は誤字の減点なし。但し字数制限違反は減点
(欲しい生徒像)
- 机上の勉強でなく社会や世界に関心がある子
(せっかく学校まで来てくれたので、少し踏み込んでヒント出します)
- 配点で差がつく問題は論述です
- 資料の精読はグラフと地図の読み取りに注意して下さい
- 記述問題は資料読み取り結果だけでなく、プラスアルファを加えて下さい
- プラスアルファとは「問題を通して問われていることは何か」のことです
社会でも一貫して表現力が問われていました。
入試説明会では2時間から半日程度かけて、じっくりと入試問題の対策や、
欲しい生徒を獲得するために、どういう問題を出して、配点を考えているか
が語られます。
入試説明会は合格に近づくための(あと1点が欲しい。入試は本当に数点差の世界!)、
不可欠な情報源です。記述で何が加点・減点されるか。知る・知らないで数点差がつきます。
過去問を使って具体的な対策を実行に移すのは子ども自身ですが、
どんな対策を行うか?を考えるのは親です。塾ももちろん対策を立ててくれます。
しかし子どもにピッタリのカスタマイズ対策ができるのは、親です。
親以外には、塾の学校別コース、特定の学校に強い個別や家庭教師などありますが、
それは過去問の話3で触れたいと思います。