四谷大塚元講師の性犯罪(性的目的の盗撮等)が注目を集めています。
ちょうど、こども家庭庁が6月に
こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議(長い・・・)
を始めたタイミングでのスクープなので、タイムリーにも見えるし、政権とメディアのスクラム
にも見えます(”こどもまんなか”は岸田政権の目玉政策。ここで支持率アップも欲しいところ?)。
いきさつはどうあれ、これにより子どもに対する性犯罪抑止につながるのであれば、
親としてはありがたいです。子どもに限らず性犯罪防止をもっと真剣に考えてほしいですが。
※「日本でそこまでの仕組みが必要ないのは性犯罪が少ないからだ」みたいな説を聞くと、
それは違うのでは?と思います。性犯罪は検挙が難しい犯罪の一つ(被害者が名乗り
出てきづらいとか、通り魔的な痴漢などは証拠が残りにくい)ということもあり、
実数が把握できていないだけと思います。また恥の文化である日本では、
ことさらにタブー視していて、犯罪の顕在化や抑止の真剣な議論が進まないと感じます。
いま子ども家庭庁で検討されている日本版DBSは、
文科省と子ども家庭庁による性暴力防止施策の一つ
です。文科省と子ども家庭庁では
- 児童生徒を対象とする性犯罪者に対して、教員や保育士の資格を実質的にはく奪
- 法的根拠は教育職員免許法と児童福祉法で、その見直しによる迅速な対応
- 法律改善だけでなく、学校等での性教育を通じて性暴力防止を実現する
といったことを検討しています。
(2023年6月27日文科省発表資料:文部科学省における性犯罪・性暴力対策への取組)
(2023年6月27日こども家庭庁発表資料:こどもの性被害防止に係る対策について)
これら包括的な取り組みの中で、日本版DBSが検討されています。
- 日本版DBSは英国の「Disclosure and Barring Service」をベースにした制度
- 日本版DBSは
教育や保育関係の雇用者(=雇う側)が、
全ての性犯罪者の性犯罪歴を登録したシステムで、
就労希望者について照会できる仕組みを想定している(以下、読売新聞より)
だそうです。その一方で、まいどなニュースが
日本版DBS、学習塾やスポーツクラブは義務化対象外?
という記事をあげていたので気になりました。
実際「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議(長い)」
の議事録を追いかけていくと、第1回の議論でも第2回の議論でも
塾や塾講師も対象とすべし
という方向で議論されています。
(有識者会議の第1回議事録。抜粋と公開場所)
(有識者会議の第2回議事録。抜粋と公開場所)
まいどなニュースに
ミスリーディング(有識者会議を知らず塾が”対象外”と認識。義務化と対象化の話は別)
リーディング(”義務化”対象にするため、あえて不安を煽るタイトルをつけた
といった意図はないと思いますが、塾も日本版DBSの実質義務化で議論は進んでいます。
法律による義務化ができないのは、先に述べたように根拠法が教員免許法や児童福祉法なので、
塾やスポーツクラブが法律の範疇外であるからでしょう。
しかし子ども性暴力の防止には不可欠ということなので、法律とのバランスを取りながら、
施策の有効性・実効性を高めていくという検討作業が進められていると考えられます。
教育新聞では
塾やスポーツクラブが加盟する日本民間教育協議会でも日本版DBS導入に前向き
とありますので、雇用主から見ても、
法的根拠のある制度を自主活用する形で独自のシステム構築や投資、
講師の個人情報保護を負担せずに信頼のおける従業員を雇える
というのはメリットを受け容れていると考えられます。
教育新聞には日本版DBSの記事が時系列で掲載されていますので、リンクを貼っておきます。
一方で、子どもを守る観点では良いことに思いますが、裏を返せば
塾本部や校長といったDBS照会権を持つ人間が、性犯罪歴という個人情報を取得できる
ということになりますので、こども家庭庁の議論の中では
必要な犯罪歴照会以外の目的で性犯罪履歴情報を得た場合は厳罰に処する
ということも話し合われています。この辺は真剣な制度議論が進んでいて、
拙速な結論でよしとするようなパフォーマンスではないという印象を受けました。
議論は2020年頃からずっと続いているようで時間はかかっていますが、
性暴力や性犯罪を減らしていけるようになってほしいと思います。